読書録

Wednesday, March 30, 2005

中学英語で言いたいことが24時間話せる!〈Part2〉―秘訣初公開 市橋 敬三(著)

良質の例文で会話力を伸ばす。

リーディングやリスニングに比べて、自習が難しいのがスピーキングです。その結果、TOEICやTOEFLではかなりの高得点を取れるのに、会話となるとサッパリ、という人は少なくないと思います。実は私もそうでした。そんな人に強力にお勧めしたいのが本書です。

本書のコンセプトは至って単純です。中学英語レベルの基本文型を徹底的に音読することで、これらの文型が反射的に口をついて出てくるようにするというものです。音読を中心とした学習自体は今日では特に珍しいものではないかもしれませんが、本書は以下の点で抜きん出ていると思います。

○同じ文型の例文が7つ程度ずつ列挙されているので、リズミカルに音読できる。
○例文がいずれも短く、印象に残りやすい。
○例文の内容が良い意味で教科書的でなく、大学生や社会人でも興味を持って続けられる。
○実用的な口語表現が多数含まれており、かなり知識のある人でも色々と発見がある。
○英文のみをナチュラルスピードで読み上げたCDが付属しているので、シャドーイングに利用できる。

本書は既にリーディングやリスニングがある程度できる人が、会話力を伸ばすために使用する教材です。中学英語を本当にイチからやり直したいという人は、本書ではなく、別の本(例えば「英文法がはじめからわかる本」(学習研究社刊))を使うべきでしょう。また、付属のCDは容赦のないナチュラルスピードですから、リスニング力に自信のない人は、他の本でディクテーション等の訓練をしてから本書に取り組んだ方が効果が上がると思います。更に、本書の文法解説は著者独自の非標準的なものが少なくない(特に関係詞の項)ため、本書に文法書としての役割を期待するのもお勧めしません。

なお、著者は似たような教材を多数執筆しており、どれを選んだらよいか悩む人もいるかもしれませんが、個人的には本書上下2巻がベストだと思います。「話すための英文法」(研究社刊)シリーズはコンパクトにまとまったロングセラーですが、音声教材が別売のカセットしかなく、全て揃えるとやや高価です。近刊の「TOEIC速習本」(南雲堂刊)はレイアウトが見やすくてよいのですが、全部で9冊もあり内容に重複が多いように思います。勿論、既にこれらの教材で学習を始めている人は、わざわざ「中学英語で…」に乗り換える必要はありません。そのまま続けるべきです。

本書は上下2巻のうちの下巻で、約800の英文が収録されています。

中学英語で言いたいことが24時間話せる!〈Part1〉―秘訣初公開 市橋 敬三(著)

良質の例文で会話力を伸ばす。

リーディングやリスニングに比べて、自習が難しいのがスピーキングです。その結果、TOEICやTOEFLではかなりの高得点を取れるのに、会話となるとサッパリ、という人は少なくないと思います。実は私もそうでした。そんな人に強力にお勧めしたいのが本書です。

本書のコンセプトは至って単純です。中学英語レベルの基本文型を徹底的に音読することで、これらの文型が反射的に口をついて出てくるようにするというものです。音読を中心とした学習自体は今日では特に珍しいものではないかもしれませんが、本書は以下の点で抜きん出ていると思います。

○同じ文型の例文が7つ程度ずつ列挙されているので、リズミカルに音読できる。
○例文がいずれも短く、印象に残りやすい。
○例文の内容が良い意味で教科書的でなく、大学生や社会人でも興味を持って続けられる。
○実用的な口語表現が多数含まれており、かなり知識のある人でも色々と発見がある。
○英文のみをナチュラルスピードで読み上げたCDが付属しているので、シャドーイングに利用できる。

本書は既にリーディングやリスニングがある程度できる人が、会話力を伸ばすために使用する教材です。中学英語を本当にイチからやり直したいという人は、本書ではなく、別の本(例えば「英文法がはじめからわかる本」(学習研究社刊))を使うべきでしょう。また、付属のCDは容赦のないナチュラルスピードですから、リスニング力に自信のない人は、他の本でディクテーション等の訓練をしてから本書に取り組んだ方が効果が上がると思います。更に、本書の文法解説は著者独自の非標準的なものが少なくない(特に関係詞の項)ため、本書に文法書としての役割を期待するのもお勧めしません。

なお、著者は似たような教材を多数執筆しており、どれを選んだらよいか悩む人もいるかもしれませんが、個人的には本書上下2巻がベストだと思います。「話すための英文法」(研究社刊)シリーズはコンパクトにまとまったロングセラーですが、音声教材が別売のカセットしかなく、全て揃えるとやや高価です。近刊の「TOEIC速習本」(南雲堂刊)はレイアウトが見やすくてよいのですが、全部で9冊もあり内容に重複が多いように思います。勿論、既にこれらの教材で学習を始めている人は、わざわざ「中学英語で…」に乗り換える必要はありません。そのまま続けるべきです。

本書は上下2巻のうちの上巻で、約900の英文が収録されています。

Tuesday, March 15, 2005

On Rawls: A Liberal Theory of Justice and Justification (Wadsworth Notes) Robert B. Talisse (著)

ロールズ入門としてはベストか。

アメリカの学部生を主な読者と想定して書かれたロールズ思想の入門書。第1章がロールズ思想の政治哲学上の位置付け、第2章がロールズの主著「正義論」の解説、第3章が後期のロールズの主張である「政治的リベラリズム」の説明、となっている。

叙述は政治哲学の知識のない人にも分かるよう工夫して書かれており、大変分かりやすい。例えば第1章では、コミュニタリアニズム(共同体主義)と対比することでリベラリズムを説明し、功利主義と対比することで社会契約を説明し、ロックの古典的社会契約と対比するとことでロールズの現代版社会契約を説明するといった具合に、対立する概念を持ってくることでロールズ思想の位置付けを浮かび上がらせている。なお、著者は自己の見解は挟まずに、ロールズ思想の紹介に徹している。

ロールズの解説書は既に洋書・邦書含めて何冊か出ているが、入門書としての分かりやすさという点では本書がベストではないかと思う。全体で100頁弱の小著ながら、「リベラリズムってなに?」という人でもロールズの思想を知ることができる貴重な本だ。英語も極めて読みやすい。

Sunday, March 06, 2005

ロールズ―『正義論』とその批判者たち チャンドラン クカサス (著), その他

いきなり「正義論」はキツイという人のために。

本書は、1971年に発表されて以来、政治哲学を中心に絶大な衝撃を与え、「ロールズ産業」と揶揄されるほどの様々な反響を呼び起こしたロールズ「正義論」の解説書である。

本書の構成は、第1章が正義論が発表された当時の思想状況と正義論が与えた衝撃について、第2章がロールズが採用した社会契約アプトローチと他の社会契約アプローチの比較、第3章が正義論の概要、第4章が著者らによるその解釈、第5章がリバタリアンからの批判、第6章がコミュニタリアンからの批判、第7章がロールズ自身によるその後の自己批判について、となっている。

本書の長所は、正義論の内容だけでなく、それに対する各方面からの批判が丁寧に紹介されており、正義論を中心に展開された近年の政治哲学の動向が概観できる点である。

他方、本書の短所は、肝心の正義論の説明があまり分かりやすくないことである。これは、本書が初学者だけでなく専門の研究者をも対象としようとした結果、入門書としての性格が中途半端になってしまったためと思われる。入門書としての分かりやすさという点でいえば、Robert Talisseの書いた薄い本の方が上かもしれない。

ともあれ、邦訳も出ている本書は、ロールズ正義論とその周辺事情を概観できるという意味では便利な本である。なお、私は原書で読んだので翻訳の巧拙については判断できない。

Wednesday, March 02, 2005

The Essential Dolly Parton, Vol. 2 [BEST OF] [FROM US] [IMPORT] Dolly Parton (アーティスト)

カントリーが好きな人も、そうでない人も。

70年代中頃から80年代全般にかけて絶大な人気を誇ったカントリーの歌姫ドリー・パートン。テネシーの貧農で12人兄弟の4人目として生まれた彼女は、12歳でデビューして以降、紆余曲折を経ながらも、順調にスターダムを駆け上がっていき、国際的な歌手としての名声を手にした。本盤はそんな彼女のヒット曲を集めたベスト盤後半。前半がポップス色の強い曲が多かったのに対し、後半は正統派カントリーが中心となっている。

どれも名曲ぞろいだが、特に聴き所を挙げるとすれば、[Jolene]、80年代らしさを感じさせる[Here You Come Again]、[Just Because I'm a Woman]、イントロが印象的な[We Used To]、[Light of a Clear Blue Morning]、しっとりしたバラード[Heartbreaker]だろうか。なお、[I Will Always Love You]は前半とは別のバージョンが収録されている。

ジャケットの写真も時代を感じさせて良い。ベスト盤前半と併せて是非どうぞ。

Liberalism (Concepts in Social Thought) John Gray (著)

拡散するリベラリズムの現状を概観するために。

リベラリズムは根拠(自然権、功利主義、社会契約)や帰結(最小国家論から社会民主主義まで)によって様々に分化する多義的な概念だが、著者はそれでも4つの特徴があるという。個人主義、平等主義、普遍主義、進歩主義である。本書はこれら4つの特徴を基軸としながら、前半で歴史的背景を説明し、後半で理論的議論を分析する。

政治哲学の入門書の常として、本書は中立的な解説書ではなく随所に著者の見解が出ている。著者の立場は、第1版では、所有権の絶対性を重視する古典的リベラリズムの立場であったが、第2版では、リベラリズムは近代の所産である進歩主義に依存した思想であってポストモダンの諸問題に対応することはできないというポストリベラリズムの立場に移行している。ただ、本書の本体部分は第1版の立場のまま残されており、最後にポストリベラリズムの立場から1章付け足す形になっている。

著者の立場に賛同するかどうかに関りなく、全体で100頁弱の小著ながら拡散するリベラリズムの現状を上手く説明した本書は、リベラリズムに興味を持つ全ての人にとって絶好の入門書である。