読書録

Wednesday, March 02, 2005

Liberalism (Concepts in Social Thought) John Gray (著)

拡散するリベラリズムの現状を概観するために。

リベラリズムは根拠(自然権、功利主義、社会契約)や帰結(最小国家論から社会民主主義まで)によって様々に分化する多義的な概念だが、著者はそれでも4つの特徴があるという。個人主義、平等主義、普遍主義、進歩主義である。本書はこれら4つの特徴を基軸としながら、前半で歴史的背景を説明し、後半で理論的議論を分析する。

政治哲学の入門書の常として、本書は中立的な解説書ではなく随所に著者の見解が出ている。著者の立場は、第1版では、所有権の絶対性を重視する古典的リベラリズムの立場であったが、第2版では、リベラリズムは近代の所産である進歩主義に依存した思想であってポストモダンの諸問題に対応することはできないというポストリベラリズムの立場に移行している。ただ、本書の本体部分は第1版の立場のまま残されており、最後にポストリベラリズムの立場から1章付け足す形になっている。

著者の立場に賛同するかどうかに関りなく、全体で100頁弱の小著ながら拡散するリベラリズムの現状を上手く説明した本書は、リベラリズムに興味を持つ全ての人にとって絶好の入門書である。

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