読書録

Tuesday, January 29, 2008

心・脳・科学 ジョン・サール (著), 土屋 俊 (翻訳)

示唆に富む。

「心の哲学」の第一人者であるジョン・R・サールが行った、6回の連続講演をまとめたもの。各回のテーマは、心身問題、「コンピュータは考えられるか」、認知科学、行為の構造、社会科学の展望、意志の自由。第2章では、有名な「中国語の部屋」の議論も登場する。

一般聴衆向けの講演をベースにしているため、説明は丁寧で、分かりやすい。他方、文章の構成はよく整理されていて、講演ベースの文章にありがちな乱雑さは見られない。著者による、一般向けの入門書としては、他に「マインド-心の哲学」(朝日出版社)があるが、基本的な論点については本書の方が分かりやすいと思う。本書を読んだ後、「マインド」を読めば、理解が深まるのではないか。

ただ、誠に残念なことに本書は現在絶版である。版元の岩波書店は是非本書を現代文庫あたりで再版してほしい。