読書録

Sunday, November 09, 2008

考えることの科学 市川伸一(著)

入門書かくあるべし。

人は論理学の法則のとおりに思考する訳ではないし、統計学の法則のとおりに推測する訳でもない。論理学や統計学はむしろ、人の推論を事後的にチェックし、正当化するためのものだ。論理学や統計学の法則と、人の直観的推論の間には「ギャップ」がある。この「ギャップ」を素人でも理解できるように丁寧に解説したのが本書である。

本書は、論理学や統計学から外れた人の直観的推論を単なる「間違い」として切り捨てるのでもなければ、「本当は常に合理的」なものとして絶対化するのでもない。独自のルールを備えた探究対象として捉えつつ、同時に適切な解説が与えられれば変更可能なものと捉えている。そこに開けるのは教育への応用可能性である。

実はそれほど期待せず読み始めたのだが、驚くほど面白かった。入門書かくあるべし、新書本かくあるべしと言いたくなる。著者の文章の巧みさも特筆すべき点である。

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