読書録

Friday, October 24, 2008

国家(上・下) プラトン(著)

極論のオンパレード

古典に対する偏見としてよくあるのが、「古典には、発表当時は画期的な主張だったかもしれないが、今日では常識化した陳腐なことが書いてある」というものだ。本書を読めば、そうした思い込みがいかに間違っているかが分かるだろう。

本書は、最初から最後まで極論のオンパレードである。「真実を見通す力を持ったのは哲学者(科学者)だけだ。だから国家は哲学者(科学者)が統治すべきだ」とか、「誰もが家族のように仲良くなれるよう、赤ん坊を肉親から引き離し、誰が誰の子供だか分らないようにすべきだ」とか、「フィクションの価値はもっぱら社会に与える影響の観点から評価されるべきだ。だから青少年に有害なフィクションは徹底的に取り締まるべきだ」とか、ともかく過激な主張が続く。もし誰かが同じ主張を今ブログに書いたら、炎上しそうなことばかりだ。約2400年前に書かれた本書だが、その論争性は当時も今も変わらない。だからこその古典なのだろう。

なお、本書を読む際は、「古典は一文一文を熟読吟味しなければならない」という思い込みも捨てるようにしたい。大部なので、そんなことをしたら途中で疲れてしまうだろう。少なくとも初読時は、小説のようにサラサラと読み進めたらよいと思う。幸い、藤沢令夫の訳は大変読みやすい。

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