読書録

Tuesday, February 15, 2005

The Essential Dolly Parton, Vol. 1: I Will Always Love You [BEST OF] [FROM US] [IMPORT] Dolly Parton (アーティスト)

カントリーが好きな人も、そうでない人も。

70年代中頃から80年代全般にかけて絶大な人気を誇ったカントリーの歌姫ドリー・パートン。テネシーの貧農で12人兄弟の4人目として生まれた彼女は、12歳でデビューして以降、紆余曲折を経ながらも、順調にスターダムを駆け上がっていき、国際的な歌手としての名声を手にした。本盤はそんな彼女のヒット曲を集めたベスト盤前編。

どれも名曲ぞろいだが、特に聴き所を挙げるとすれば、彼女自身が出演した映画の主題歌で、快活でポップなナンバー[9 to 5]、しっとりした[But You Known I Love You]、ヨーデル風の出だしが面白い[Tennessee Homesick Blues]、そして1992年のホイットニー・ヒューストンによるカバーが爆発的にヒットした表題曲[I Will Always Love You]だろうか。なお、個人的には[I Will Always Love You]はカバーよりも原曲の方が好きだ。

邦楽だと中島みゆきが好きな人なんかはきっと気に入ると思う。カントリーなんて聴かないよ、という人にもオススメの作品。

Russell: A Very Short Introduction (Very Short Introductions) A. C. Grayling (著)

ラッセル思想の概観に最適。

Oxford出版から刊行されているVery Short Introductionシリーズの一冊。同シリーズは、歴史、哲学、宗教、科学、人文の各分野について英米の一流の学者が一般向けに解説するもので、岩波書店からも「1冊で分かる」シリーズという名前で邦訳が順次刊行されているが、本書の邦訳は未刊。

本書は、二十世紀最大の思想家の一人、バートランド・ラッセルの思想について概説したもの。ラッセルは数理論理学から反核運動に至るまで実に幅広い分野で活動した人だが、本書はその多岐に亘る業績を限られた分量の中で要領良く解説しており、入門書としてオススメできる。

構成は、第1章でラッセルの生涯について概観した後、第2章と第3章で数理論理学及び認識論での業績を説明し、続く第4章で政治や社会に対する発言や活動を概説した上で、第5章でラッセルの業績がその後の学問に与えた影響を評価する。叙述は全般によく整理されているが、第2章と第3章、とりわけ認識論について述べた第3章については、時々これだけでは理解が困難と思われる箇所がある。もっとも、これは内容の極度の抽象性に加えて、ラッセル自身の思想が変遷を重ねているためで、著者の責任とは言えないだろう。英語としては比較的読みやすい。

大きさは日本の新書とちょうど同じくらいなので、ポケットに入れて持ち運べる。文字がやや小さいが、慣れれば問題ない。値段も洋書にしては手ごろ。カバーのデザインがとても美しいのも特筆すべき点だ。

Sunday, February 13, 2005

英語音声学入門 英語・英米文学入門シリーズ 松坂 ヒロシ (著)

分かりやすく、信頼できる。

個人的には、発音学習は、理論的基礎の怪しい英語学習書に手を出すよりも、音声学を体系的に学んだ方が近道だと思います。音声学の本は多数出版されていますが、中でも本書をオススメする理由は以下の通りです。
○著者はNHKラジオ講座「リスニング入門」の講師も務める音声学の専門家で、ネイティブ並の発音ができる数少ない日本人の一人。このため、記述に信頼が置ける。
○学術書でありながら、理論面に偏ることなく、「発音のものさし」等の図解を用いて直感的にも理解しやすい説明がなされている。
○細かい部分は大胆に省いて、実際上重要な部分に絞って解説がされているので、初学者も混乱しないで済む。
○英音と米音をバランス良く取り上げている。
勿論、学術書なので、巷の発音参考書のような派手さはありませんから、活字を読むのがそもそも辛いという人にはオススメしません。なお、付属のカセットテープは研究社のウェブサイトから注文することができます。

Sunday, February 06, 2005

Political Philosophy: A Very Short Introduction (Very Short Introductions) David Miller (著)

濃密な政治哲学入門。

Oxford出版から刊行されているVery Short Introductionシリーズの一冊。同シリーズは、歴史、哲学、宗教、科学、人文の各分野について英米の一流の学者が一般向けに解説するもので、岩波書店からも「1冊で分かる」シリーズという名前で邦訳が順次刊行されているが、本書の邦訳は未刊。

著者はOxford大学の教授で、政治哲学界の重鎮。「国民性論」や「社会正義の原理」等の著作がある。本書は、国家の必要性、民主主義、リベラリズムと国家による介入の限界、正議論、フェミニズムと多文化主義、国民国家と国際正義といった政治哲学の主要論点について解説したものだが、著者も認めるとおり中立的な概説ではなく、著者自身の主張が各所で前面に出ている。とりわけ、著者の著作がある社会正義論や国民国家論については、事実上、著者の思想への入門書なっている。とはいえ、他説の内容も分かりやすく解説されているので、政治哲学全般の入門書としての実用性にも問題ない。また、非中立的叙述の効用として、各章が有機的に関連し、読了すると全体として一つの体系が浮かび上がるようになっている。

全体で130ページ程度の小著だが、(文字が小さいせいもあるが)密度は極めて濃く、精読に値する良書である。英語は日本人にとって平易とまでは言い難いが、格調高い名文。大きさは日本の新書とちょうど同じくらいなので、ポケットに入れて持ち運べる。値段も洋書にしては手ごろ。Very Short Introductionシリーズに共通することだが、装丁が美しい。

Friday, February 04, 2005

Philosophy of Science: A Very Short Introduction (Very Short Introductions) Samir Okasha (著)

入門書のお手本。

Oxford出版から刊行されているVery Short Introductionシリーズの一冊。同シリーズは、歴史、哲学、宗教、科学、人文の各分野について英米の一流の学者が一般向けに解説するもので、岩波書店からも「1冊で分かる」シリーズという名前で邦訳が順次刊行されているが、本書の邦訳は未刊。

本書は、科学と疑似科学の境界、帰納の問題と確率の意味、科学的説明とは何か、リアリズムと反リアリズムの対立、科学の進展と科学革命、科学の価値中立性といった科学哲学の代表的問題について解説したもの。記述は極めて明快で、読者の理解を助け、興味を引き立てるための具体例が豊富に挙げられている。Very Short Introductionシリーズには入門書にもかかわらず著者の個性が強く出たものが多いが、本書は特定の立場に偏らず公平な叙述を心掛けている。まるで入門書のお手本のような構成だ。英語としても大変読みやすい。

大きさは日本の新書とちょうど同じくらいなので、ポケットに入れて持ち運べる。文字がやや小さいが、慣れれば問題ない。値段も洋書にしては手ごろ。カバーのデザインがとても美しいのも特筆すべき点だ。

Tuesday, February 01, 2005

Principles of Microeconomics N. Gregory Mankiw (著)

最良の入門書。

既に多くの方が書かれているとおり、本書ほど経済学の基本コンセプトを丁寧に、分かりやすく、面白く解説した本はありません。「経済学って何の役に立つの?」という素朴な疑問に対する答えがこの本にはあります。経済学を食わず嫌いの人は、まず本書から入ることをオススメします。予備知識は一切必要ありません。

邦訳と原書がありますが、ペーパーバックを読める程度の英語力がある人は、是非原書にチャレンジしてみて下さい。邦訳よりもカラフルで、レイアウトも見やすく、写真や漫画(!)も豊富です。プレイン・イングリッシュのお手本のような英語なので、英作文力を伸ばすのにも役立つと思います。