読書録

Friday, July 07, 2006

クリプキ―ことばは意味をもてるか 飯田 隆 (著)

「あとがき」から読もう。
クリプキの「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」についての解説書。他のレビュアーも指摘するとおり、クリプキの他の業績(可能世界論や「名指しと必然性」での議論など)については何も書かれていない。だから、クリプキの業績全般についての概説書を期待して購入する人はガッカリするだろう。でも、クリプキは自分の体系を着々と構築するタイプではなく、その時々に関心を持った課題を議論するタイプの哲学者だから、別にこれで構わないのだ、というのが「あとがき」での著者の説明で、多分それはそうなのだと思う。記述は大学新入生向けの講義を基にしているだけあって実に分かりやすく、クワス算のくだりは適度にふざけていて面白い。タイトルは若干ミスリーディングだが、本書の趣旨さえ誤解しなければ、とても良い本である。

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