同一性・変化・時間 野矢茂樹(著)
哲学講義の実況中継
本書は前半と後半に分かれる。前半がシンポジウムでの発表と質疑応答を記録したもので、後半が同じテーマについての後年の考察を書き下ろしたものである。こう書くと後半の方が難しいような印象だが、実は、後半の方がずっと分かりやすい。前半は、あくまでも導入あるいは問題提起だと考えたほうがよい。つまり何が言いたいかというと、前半でつまずく箇所があっても、諦めずに後半まで読了すべきだということだ。
本書は、かなりくだけた文体で書かれている。大学受験の参考書で「実況中継シリーズ」というのがあるが、ちょうどあんな感じである。専門用語には必ず説明があるし、重要な点は繰り返し強調される。ところどころ冗談もある。その結果、ちょっと背伸びすれば、高校生でもついて行けるような内容になっている。
というわけで、本書は哲学に興味のある全ての人に勧めることのできるものだが、唯一引っかかるのは、他のレビュアーも書いているように、「何のためにそういう議論をするのか?」がいまひとつピンと来ないという点である。哲学というのは元来役に立たないものなので、実用的な意義など求めるべきではないのだろうとは思う。また、本書の分析的思考のプロセスは文句なしに面白いので、それだけでも本書には価値があるとも思う。ただ、問い自体の切実さのようなものが、もう少し強調されていても良かったようにも思うのである。
本書は前半と後半に分かれる。前半がシンポジウムでの発表と質疑応答を記録したもので、後半が同じテーマについての後年の考察を書き下ろしたものである。こう書くと後半の方が難しいような印象だが、実は、後半の方がずっと分かりやすい。前半は、あくまでも導入あるいは問題提起だと考えたほうがよい。つまり何が言いたいかというと、前半でつまずく箇所があっても、諦めずに後半まで読了すべきだということだ。
本書は、かなりくだけた文体で書かれている。大学受験の参考書で「実況中継シリーズ」というのがあるが、ちょうどあんな感じである。専門用語には必ず説明があるし、重要な点は繰り返し強調される。ところどころ冗談もある。その結果、ちょっと背伸びすれば、高校生でもついて行けるような内容になっている。
というわけで、本書は哲学に興味のある全ての人に勧めることのできるものだが、唯一引っかかるのは、他のレビュアーも書いているように、「何のためにそういう議論をするのか?」がいまひとつピンと来ないという点である。哲学というのは元来役に立たないものなので、実用的な意義など求めるべきではないのだろうとは思う。また、本書の分析的思考のプロセスは文句なしに面白いので、それだけでも本書には価値があるとも思う。ただ、問い自体の切実さのようなものが、もう少し強調されていても良かったようにも思うのである。
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