新版 現代政治理論 W. キムリッカ(著)
非中立的記述の効用
英語圏の大学における政治哲学の教科書の定番である"Contemporary Political Philosophy"第2版の邦訳。第1版と比べると、シティズンシップ論と多文化主義についての新たな章が追加されたほか、全体に大幅な加筆・修正が施されている。
本書は、政治哲学上の諸見解を中立的な立場から解説したものではない。著者自身の立場から、他の見解を主として批判的に検討したものである。具体的には、第2章で功利主義の問題点を指摘した後、第3章でロールズ及びドォーキンの議論を基礎とした「平等主義的リベラリズム」が著者の立場であることを示し、第3章以下で、これに対する他の見解からの批判とそれに対する応答を述べる、という構成になっている。
したがって、例えば本書のマルクス主義に関する章を読めばマルクス主義全般について分かるというものではないし、フェミニズムに関する章を読めばフェミニズム全般について分かるというものでもない。本書が目指したのは、あくまでも、リベラリズム、とりわけロールズ「正義論」を中心として展開された、1970年代以降の英米政治哲学の議論の展開を読者に理解させることである。
そのような目的の本として読む限り、本書は大変優れている。多様な見解を一貫したストーリーの中で位置付け、分析する手法はほとんど名人芸である。また、批判と応答の繰り返しを追うことによって、知識だけでなく政治哲学という学問の議論の作法を知ることができるのも本書の長所である。
邦訳は哲学書の翻訳としては平明で、共訳にありがちな不統一もほとんど見られない。
英語圏の大学における政治哲学の教科書の定番である"Contemporary Political Philosophy"第2版の邦訳。第1版と比べると、シティズンシップ論と多文化主義についての新たな章が追加されたほか、全体に大幅な加筆・修正が施されている。
本書は、政治哲学上の諸見解を中立的な立場から解説したものではない。著者自身の立場から、他の見解を主として批判的に検討したものである。具体的には、第2章で功利主義の問題点を指摘した後、第3章でロールズ及びドォーキンの議論を基礎とした「平等主義的リベラリズム」が著者の立場であることを示し、第3章以下で、これに対する他の見解からの批判とそれに対する応答を述べる、という構成になっている。
したがって、例えば本書のマルクス主義に関する章を読めばマルクス主義全般について分かるというものではないし、フェミニズムに関する章を読めばフェミニズム全般について分かるというものでもない。本書が目指したのは、あくまでも、リベラリズム、とりわけロールズ「正義論」を中心として展開された、1970年代以降の英米政治哲学の議論の展開を読者に理解させることである。
そのような目的の本として読む限り、本書は大変優れている。多様な見解を一貫したストーリーの中で位置付け、分析する手法はほとんど名人芸である。また、批判と応答の繰り返しを追うことによって、知識だけでなく政治哲学という学問の議論の作法を知ることができるのも本書の長所である。
邦訳は哲学書の翻訳としては平明で、共訳にありがちな不統一もほとんど見られない。
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