言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 佐藤 卓己 (著)
立身出世と思想形成
戦時言論統制を統率した情報官・鈴木庫三少佐は、死の床に至るまで、自己の行動の正義を確信していた。そうした鈴木の思想の形成過程を丹念に辿ったのが本書である。ある人が自由と民主主義を憎み、国家社会主義に共鳴するに至るのはどのような事情によってか、私は本書を読んで初めて理解できた気がする。戦時下の文化人達が鈴木の「一喝」の前に「縮み上る」ほかなかったのは、もちろん陸軍の権勢によるところも大きいだろうが、同時に彼らが鈴木ほどの強固な信念を持たなかったからではないか。「思想戦」の帰趨を決するのは、最後は体験に裏付けられた信念の強度なのかもしれない。新書にしてはかなりの大部だが、一気に読了した。
戦時言論統制を統率した情報官・鈴木庫三少佐は、死の床に至るまで、自己の行動の正義を確信していた。そうした鈴木の思想の形成過程を丹念に辿ったのが本書である。ある人が自由と民主主義を憎み、国家社会主義に共鳴するに至るのはどのような事情によってか、私は本書を読んで初めて理解できた気がする。戦時下の文化人達が鈴木の「一喝」の前に「縮み上る」ほかなかったのは、もちろん陸軍の権勢によるところも大きいだろうが、同時に彼らが鈴木ほどの強固な信念を持たなかったからではないか。「思想戦」の帰趨を決するのは、最後は体験に裏付けられた信念の強度なのかもしれない。新書にしてはかなりの大部だが、一気に読了した。
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