読書録

Friday, December 30, 2005

君主論 ニッコロ マキアヴェッリ(著)

研究者向けか。

「厳しい原典批判をへた画期的な新訳」ということだから、原文の忠実な再現という意味では賞賛すべき訳業なのだろう。詳細な訳注からも、訳者がこの翻訳にかけた意気込みは伺える。十年がかりの作業だったらしい。

しかし、読みにくい。ともかく読みにくい。一例を挙げよう。

「なぜならば、フランス王国は無敵のものとなったであろうから、もしもシャルルの創設した軍制が発展させられるか、あるいはせめて維持されていたならば。」

こんな日本語があるだろうか。たぶん原文を逐語訳し、その上語順まで再現しようとしたのだろう。でも、日本語とイタリア語では文章構造が全く異なるのだから、これはいくらなんでも無茶である。

冒頭にも書いたように、正確性という点では優れているのだろう。従って、専門の研究者が参照するテキストとしては適しているのかもしれない(もっとも、研究者だったら原典に当たると思うが)。その他の一般の読者は、悪いことは言わない、中公文庫でも講談社学術文庫でも、他の邦訳をお勧めする。

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