読書録

Wednesday, December 07, 2005

哲学入門 ちくま学芸文庫 Bertrand Russell (原著), 高村 夏輝 (翻訳)

素晴らしい。

ラッセルの"Problems of Philosophy"の邦訳。同書は既に何度も邦訳されており、原文ならWebでも読める。それを今更どうして翻訳したのだろう、と疑問に思い書店で手にとってみたが、読み始めて納得。従来の邦訳をはるかに凌ぐ読みやすい日本語になっている。訳者の仕事に拍手を送りたい。

私はふだん、英米の哲学書は出来るだけ原典を読むようにしている。邦訳を読んでも、生じた疑問が原文に起因するのか翻訳に起因するのか分からず、結局原書に当たらないといけないので、二度手間だからだ。ところが本書は、原文の意味を極めて読みやすい日本語で伝えており、訳注も充実しているので、原文に戻る必要がほとんどない。これは哲学書の翻訳としては異例のことだ。本書のような翻訳スタイルが一般化すれば、日本における哲学への敷居は随分下がるだろう。

哲学とは本来、難解ではあっても、明晰なものだ。そのことを改めて実感させてくれる優れた訳業である。

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