三位一体改革ここが問題だ 土居 丈朗 (著)
広く読まれるべき好著。
著者がこれまで専門書や論文で述べてきた分析や提言を、一般向けに分かりやすく書き改めたもの。記述は至って平易で、経済学や財政学の知識がない人でも理解できる。
著者の分析は、言われてみればなるほどと思うことばかりだ。たとえば、新聞報道などでは「中央」対「地方」という単純化された形で語られることの多い三位一体改革だが、実際には中央官庁でも財務省と総務省と事業官庁では思惑が異なり、地方自治体でも都市部と農村部では利害が異なること。現在の地方交付税は「足りない分を補う」仕組みのため、地方自治体の財政改善努力に水を差す側面があること。税源、補助金、地方交付税の三者を同時に改革することを指して三位一体改革と言うわけだが、実際には地方債という第四の問題があり、これも含めて制度を設計しないと真の改革にはならないこと。こうした点を著者は明快に指摘する。
以上を踏まえた著者の提言は、極めてラディカルだ。大雑把に言うと、地方交付税については、財源保障機能と財源調整機能を分離した上で、前者についてはナショナル・ミニマムを維持するために必要な金額を事業官庁が全額負担するようにし、後者については一定比率で単純に再分配する。地方債については、国による補填の可能性を断ち、基本的に市場に委ねる。ただし、地方自治体間での格差是正については、所得再分配は地域単位ではなく個人単位で行うべきであるから、必要最小限にとどめるべきだというのが著者の立場だ。
こうした著者の提言は、現状と比較した場合あまりにドラスティックな改革を伴うものなので、政治的な実現可能性はほとんどゼロといって良いだろう。それでも、本書が「本来どうあるべきか」を簡明な形で描き出したことは、議論の方向をクリアにする上で有意義なことだったと思う。三位一体改革のように複数の制度が絡み合う複雑な問題ではこの点は尚更重要だ。
最近は郵政民営化問題の陰に隠れてあまり目立たない印象のある三位一体改革だが、国民生活への中長期的なインパクトという観点から見れば、郵政民営化問題などよりも遥かに重要なはずだ。ハードカバーのため新書やソフトカバーに比べると若干敷居が高い感じがするかもしれないが、学生だけでなくビジネスマンや主婦などにも広く読まれるべき本だと思う。
著者がこれまで専門書や論文で述べてきた分析や提言を、一般向けに分かりやすく書き改めたもの。記述は至って平易で、経済学や財政学の知識がない人でも理解できる。
著者の分析は、言われてみればなるほどと思うことばかりだ。たとえば、新聞報道などでは「中央」対「地方」という単純化された形で語られることの多い三位一体改革だが、実際には中央官庁でも財務省と総務省と事業官庁では思惑が異なり、地方自治体でも都市部と農村部では利害が異なること。現在の地方交付税は「足りない分を補う」仕組みのため、地方自治体の財政改善努力に水を差す側面があること。税源、補助金、地方交付税の三者を同時に改革することを指して三位一体改革と言うわけだが、実際には地方債という第四の問題があり、これも含めて制度を設計しないと真の改革にはならないこと。こうした点を著者は明快に指摘する。
以上を踏まえた著者の提言は、極めてラディカルだ。大雑把に言うと、地方交付税については、財源保障機能と財源調整機能を分離した上で、前者についてはナショナル・ミニマムを維持するために必要な金額を事業官庁が全額負担するようにし、後者については一定比率で単純に再分配する。地方債については、国による補填の可能性を断ち、基本的に市場に委ねる。ただし、地方自治体間での格差是正については、所得再分配は地域単位ではなく個人単位で行うべきであるから、必要最小限にとどめるべきだというのが著者の立場だ。
こうした著者の提言は、現状と比較した場合あまりにドラスティックな改革を伴うものなので、政治的な実現可能性はほとんどゼロといって良いだろう。それでも、本書が「本来どうあるべきか」を簡明な形で描き出したことは、議論の方向をクリアにする上で有意義なことだったと思う。三位一体改革のように複数の制度が絡み合う複雑な問題ではこの点は尚更重要だ。
最近は郵政民営化問題の陰に隠れてあまり目立たない印象のある三位一体改革だが、国民生活への中長期的なインパクトという観点から見れば、郵政民営化問題などよりも遥かに重要なはずだ。ハードカバーのため新書やソフトカバーに比べると若干敷居が高い感じがするかもしれないが、学生だけでなくビジネスマンや主婦などにも広く読まれるべき本だと思う。
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